企業価値担保権施行まで1年 認知度は3割超に上昇 国や金融機関から制度に対する十分な説明継続が必須

資金調達ニュースの概要

今回のプレスリリースは、「企業価値担保権」に関する意識調査の結果を発表するものであり、特にその認知度の向上と制度の理解度についての調査結果に焦点を当てています。株式会社帝国データバンクが実施したこの調査は、全国の企業2万6,590社を対象に行われ、有効回答は1万735社に上りました。調査の結果、企業価値担保権の認知度は35.1％となり、前回調査の28.3％からの増加が見られました。しかしながら、依然として半数以上の企業がこの制度を知らない状況が続いています。資金調達の手法としての活用意向を示した企業は28.6％であり、その理由として「事業性に着目した評価」を挙げる企業が多いことが分かりました。一方で、自己資本で事足りているとする意見も少なくありません。これに伴い、制度の普及や金融機関の役割が重要であると指摘されています。

資金調達ニュースの背景（推測）

企業価値担保権の導入背景には、従来の資金調達方法に対する限界や課題があると考えられます。不動産担保や経営者保証に依存する伝統的な融資手法では、企業の真の潜在力や成長性、事業性に基づく評価を反映することができませんでした。また、資金調達を必要とする企業にとって、特にスタートアップや成長段階にある企業では、無形資産や将来キャッシュフローを必要とするケースが増えてきています。このようなニーズの変化に応える新しい資金調達手法として企業価値担保権の導入が進められています。

しかし、調査結果に見られるように、企業の多くがこの制度に対する認知が不足している状態が続いていることから、制度の詳細や活用方法についての説明不足が背景にあると考えられます。特に、企業価値担保権は未だ新しい制度であり、その正確な評価方法や金融機関との関係構築における不安があるため、企業が積極的に活用するにはハードルが高いと認識されている可能性があります。企業価値担保権の本格導入が2026年春に予定されていることからも、時間的余裕がない中でより一層の情報発信や普及活動が求められている状況が浮かび上がります。

資金調達ニュースから参考にすべきポイント（推察）

企業経営者や財務担当者にとって、以下のポイントは今後の資金調達戦略を考える上で特に参考になると考えられます。

まず第一に、企業価値担保権の導入は、企業が成長するための新たな資金調達手法の一つとして認識されるべきです。特に無形資産や未来のキャッシュフローを担保に利用できることで、従来の方法では評価されにくい価値を資金調達に変える新たな道を開く可能性があります。これにより、より多くの企業が資金を得る手段を持ち、柔軟な経営が実現できるかもしれません。

次に、ファイナンスの観点から見た際、企業による自己評価が信頼性のあるものでなければなりません。事業性に基づく評価が重要視される中で、企業は自らのビジネスモデルやキャッシュフローの安定性について十分な理解を深め、外部からの評価を受け入れられる体制を整える必要があります。また、金融機関との連携強化に向けた努力も求められます。企業は、金融機関が求める情報やデータに基づいた透明性の高い経営を目指し、相互信頼を築くための取り組みが重要です。

さらに、現状の認知度が35.1%という数値は、企業の財務戦略を見直す良い機会とも言えます。特に、自社の資金調達方法や条件を見たいと考えている企業は、積極的にこの制度について調査し、見積もりを行うことが求められます。企業価値担保権がどのように自社のビジネスにプラスの効果をもたらすかを理解することは、将来の資金調達を考える上で不可欠です。

最後に、制度の有効性を高めるためには、国や金融機関が今後も引き続き十分な説明や普及活動を行うことが欠かせません。確実に多くの企業にこの制度を理解させ、活用を促すためには、説明会やセミナーの実施も効果的でしょう。また、地域の商工会議所との連携を強化することで、より広範なインフォメーションを提供し、企業の期待や不安に寄り添ったサポートが求められます。

このような取り組みを通じて、企業は自身の資金調達の選択肢を広げ、新たな成長の機会を得ることができるでしょう。企業価値担保権は、正しく理解され、適切に活用されることによって、経営の資金調達をより効率的に行うための有力な手段となる可能性があります。

企業価値担保権施行まで1年 認知度は3割超に上昇 国や金融機関から制度に対する十分な説明継続が必須企業価値担保権に対する企業の意識調査（2025年4月）株式会社帝国データバンク2025年5月23日 10時01分0
photo by pixta.jp
株式会社帝国データバンクは、全国2万6,590社を対象に「企業価値担保権」に関するアンケート調査を実施した。なお、企業価値担保権に関する企業の意識調査は、2024年9月に実施し今回で2回目             
SUMMARY
企業価値担保権の認知度は35.1％と前回調査（2024年9月）より6.8ポイント上昇。ただし、半数以上の企業に認知されていない状況が続いた。活用意向のある企業は28.6％で、「事業性に着目した評価」を理由とする企業が多い一方で、「自己資本」「既存の融資」で十分といった理由で活用意向のない企業は26.5％だった。制度の周知不足や金融機関による評価の難しさなどの課題があり、今後の制度の詳細設計や普及に向けた取り組みが重要となる。
                        
調査期間：2025年4月16日～4月30日（インターネット調査）
調査対象：全国2万6,590社、有効回答企業数は1万735社

認知度は35.1％に上昇も、「知らない」企業が依然として半数超 
 企業価値担保権の認知状況について尋ねたところ、認知度は35.1％（前回調査28.3％）と前回調査より6.8ポイント上昇し、3社に1社が制度を認識していた。その内訳は、「制度の内容を含めてよく知っている」が0.6％（同0